代表取締役 下地孝雄

代表取締役 下地孝雄

設立 1998年4月1日
事業内容
    • 雑誌・書籍の編集、制作、印刷、販売
    • 各種編集・制作受託
    • イベント企画・運営
    • インターネット事業
会社HP http://reviewmagazine.co.jp/index.html

新卒入社がきわめて困難な出版社を目指したワケ

私が就職活動をした1990年代初頭はバブル景気の名残があって、
就活をする大学生にとっては天国のような環境でした。

そんな環境の中にあっても、私が志望した出版社に就職するのは至難の業でした。
小学生のころから音楽を手始めに海外のミュージシャンたちが活躍する未知の国や町の景色、
その文化や生活に思いを馳せながら雑誌を読み漁っていました。

さらに写真に写っている海外の人たちのファッションや、
街を行き交うクルマやバイク、風景に溶け込む看板やポスターなどのアート作品など、
雑誌が与えてくれる情報は私の想像を広げ続けてくれました。

そんな記憶と未知への好奇心、探究心という個人的な思いと、
情報を必要としている人に伝える、その時代の記憶を後世に残すといった
意義のある仕事であることから、雑誌編集者を目指したのです。

ところが出版社は編集者や記者に新卒を採らないのです。
なぜなら即戦力となる人材を必要とするからです。
新卒を採用する場合でも、数千名もの応募者の中から数名しか採用しないという難関なのです。

雑誌や書籍は分野やテーマが絞られた内容となるため、
記事を作る編集や記者という仕事には高い専門知識と企画力、文章力が求められます。

これらの能力は誰もが習得できるものではなく、適性が求められます。
適性のある人ならば経験と努力を積み重ねることで、能力を習得でき高度化できます。

未経験の新卒の人材に適性があるかどうか見極めるのは難しいうえに、
仮に適性があっても現場で活躍できるまで育てるのは時間がかかるうえに、
そもそも雑誌や書籍の編集の現場で新人を教育する時間の余裕のある先輩は誰一人いません。

こうした事情から新卒で出版社に就職するのはとても難しかったのです。
言い訳ではありませんが、私も出版社に絞って何社も試験を受けましたが全滅でした。

就職活動が進まず、当時アルバイトをしていた出版社の編集者に相談したところ、
こんなアドバイスをいただきました。

『出版社に入りたいのならば、どんなに小さな出版社でもいいから、とにかく潜り込め。
そして経験者の肩書きを身に付けてから、自分のやりたい雑誌を転職すればいい』

当時は終身雇用が当たり前で転職は少なかったのですが、出版社は転職が多い業界でした。
かといって中途採用で希望の出版社に就職しやすくなるのかというと、それも難しいのです。
しかし「経験者」の肩書を得られれば、業界内での転職はしやすかったのは事実です。

こうした経緯から内定をいただいた出版社に新卒で入社したのです。
その出版社は小さな会社で雑誌も発行しておらず、分野は特定の法律に限られていましたが、
本を作るということに変わりはありません。
まずはこの会社で経験を積み、次のステップを目指そうと決めたのです。

自分がやりたい本質に向き合う

しばらく新卒で就職した出版社で経験を積み、
いよいよ次のステップに進むときがやってきました。
当初は私がずっと興味を持っていた音楽やファッション、
クルマやバイク、旅行、スポーツといった
趣味の雑誌を発行する出版社への転職を考えていました。

そもそも私が雑誌の編集者や記者になりたいと考えたのは、
雑誌の記事や存在そのものが時代の変化を直接反映できるからです。
簡単に言えば、世の中の変化について速やかに、
そして表現豊かに情報を伝えられることに魅力を感じていたからです。

私が転職によって次のステップに進むとき、近い将来、
世の中を大きく変えるのではないかと思った出来事がありました。
それは90年代初頭にIBMが発売したIBM PCとそれに採用されていたOS、IBM DOSです。
これは私たちが現在使っているパソコンそのものなのです。

当時は高価で一部の人しか使っていなかったパーソナルコンピューターが、
世界統一規格のIBM PC/IBM DOSで量産化されれば互換品が次々と登場して安くなり、
世界中で普及する。

そうなると、身近なところでは原稿を書くのも誌面をデザインするのも印刷をするのも
すべてパソコンでできるようになり、これまでとは違った表現ができるようになる。
こんな革新が仕事に限らず生活のあらゆるところで生じて世界が変わるのではないか。

そんな胎動を感じたのです。
そして次のステップとしてパソコン雑誌を発行する出版社に転職したのです。

転職するまで一度もパソコンに触れたこともなく専門知識もまったく持っていませんでしたが、
思った通りパソコンが急速に普及を始めて社会に大きな変化をもたらし始めたのです。

その変化を夢中で追いかけました。
まさに休みなく情報を追い続け、記事を作り続け、
そして雑誌編集の現場責任者である編集長に就任しました。
そして時代の変化に応じて新しい雑誌を立ち上げたり、
インターネットに可能性を感じるといち早くホームページを開設したりしました。

しかし変化は止まりません。
インターネットの利用が企業にも浸透し始めた90年代の終わりごろ、
今後はコンピューター関連の情報は個人利用が目的ではなく、
経営や業務といった企業利用が中心となると考えました。
そうなるとコンピューターやネットワークの関連の専門知識だけでは
取材もできないし記事も作れないと考えたのです。

しかし当時在籍していた出版社では、
企業経営とコンピューターを結びつけたテーマで雑誌を発行しておらず、
確かにまだ時期尚早でした。しかしコンピューターの世界における変化のスピードは速く、
本格的に変化する前に舵を切らないと波に乗ることが難しくなる。
それならば自分の編集部を作ろうと考えたのが、独立したきっかけです。

編集部には使われていない「知」が集積している

最初は私だけで始めましたが、
すぐにパソコン雑誌で編集経験のある若い人材を集めて編集部を作りました。
編集部の機能を1社で持つ独立した会社ならば、原稿を書くだけ、
デザインをするだけの制作会社とは差別化できます。
しかも、コンピューターの記事を通じてさまざまな分野の専門知識を習得すれば、
活動できるフィールドも広がります。

例えばコンピューターは、
商社、金融、不動産、自動車、食品、外食、小売・流通、医療、エネルギーと
挙げればきりがありません。
そしてコンピューターの使われ方の取材を通して、
あらゆる分野の専門知識や最新動向が習得できるのです。

こうした習得した情報の伝達は1冊の雑誌や書籍、
インターネットの記事といった限られたスペースに留まっています。
しかし実際には膨大な量の情報が編集部に蓄積されているのです。

例えば雑誌1ページの記事を作る場合、
4人や5人の人に会ったり何カ所もの場所に赴いたりして集めた情報を、
わずか400文字原稿用紙3枚程度にしか表現できません。

「知」の集積から企業のイノベーションのお手伝いをする

では記事にならなかった情報には価値はないのでしょうか。
記事はある特定のテーマに基づいて書くため、
想定している読者や目的から外れた部分はそのときは不要です。
しかし別の目的を持った読者には、記事にしなかった情報が宝の山になります。
ですから編集部に蓄積された情報という「知」は、
さまざまな目的に応じて組み合わせたり切り取ったりして活用できるのです。

これまでは「知」を雑誌やインターネットの限られたスペースや
特定のテーマという枠で提供してきました。
これからはこの「知」を読者の新たなビジネスの創造や
ビジネスモデルの開発に役立てたいと考えています。

集積された「知」を求めてさまざまな分野の企業が集まることで新たな「知」が集積され、
さらに「知」と「知」がつながって大きな可能性を生み出します。
いわゆるビッグデータのような役割を私たちが務め、企業のビジネスを変革させるお手伝いをする。
これは雑誌を作ることと何ら変わりません。

蓄積されている情報をどのように使っていくのかについては、まだ検討の余地はあります。
ですが、私たちが集めてきた情報には未曾有の価値があると確信しています。

冷めた情熱を持った人

「知」の集積を今後も行っていくにあたり、
私達の課題となっているのは「知」を集められる人材の獲得です。
それも、価値のある「知」を見分ける能力を持つ人材です。

冒頭でもお話しした通り、
こうした能力は誰もが習得できるものではなく、適性が求められます。
適性のある人ならば経験と努力を積み重ねることで、能力を習得でき進化させることができます。

では、適性とは何でしょうか。簡単に言うと野次馬根性です。
新しいことを「知りたい!」と貪欲に興味を持ち、
それを人に自慢したい、世の中に伝えたい、という欲求を持つ人。
こうした行動それ自体が、雑誌や書籍、インターネットネットを通じた情報発信の動機なのです。

適性だけではなく気持ちも大切です。
何がなんでも雑誌の仕事がしたい、情報を伝えて役に立ちたいと思い続けられる情熱と、
どんなにつらくても絶対にやり続けるという覚悟も必要です。

ただし情熱とは言っても、それはガムシャラという意味ではありません。
会社やチームの中での自分の役割を理解して、
やるべきことをやるための能力を磨きながら結果を出す、そんな冷静さが必要です。
情熱に色があるならば、赤ではなく青です。
そんな冷めた青の情熱を持っている人が必要なのです。

ムダな事をやらない

失敗してもいいから挑戦しろ、ということは仕事においてはあり得ません。
会社は利益を得る場所です。
その利益から給料が出るわけですから、損失を出していいわけがありません。

無駄なこともしてはいけません。仕事は自分の会社とお客さまとが利益を得ることが目的です。
利益につながらない行動は、仕事においては何一つ価値を生まないからです。

ただし仕事において挑戦は必要です。
それには損失を出さないための計画や備えが万全であることが前提です。
また、利益を得るには何が利益なのかを冷静に見極めて、その成果に向けた計画と、
計画がずれたときの備えを用意しておくことが必要です。

今やっている仕事、これからやる仕事、いずれにしても自分で選んだ会社、仕事です。
ですから自分の行動に責任を持ってください。会社にではなく「自分自身に」です。
あなたが無責任な行動を取ると、会社に迷惑がかかります。同時にお客さまにも迷惑がかかります。

今のあなたの責任は何なのか、わかっているつもりになっていませんか。
あなたの責任は環境によって変わったり増えたりします。
ですから、まずは自分の今の責任とは何かを自分自身に問いかけて、冷静に考えてみてください。
そしてこの話をずっと忘れないでください。